新国立劇場 バレエ『マノン』の世界に魅了された話
バレエ講演を久しぶりに鑑賞させていただいた。
今、新国立劇場はインターネット上に過去の舞台を無料で公開している。
先週は『マノン』、現在は『ドンキホーテ』だ。
私は小学校2年生くらいから中2くらいまでクラシックバレエを習っていたが、
そちらかというと「習わされる」感じで、ステージの魅力もよくわからず
それでも、何故かわかならいまま頑張っているが、中々踊りの振りも覚えられず…
トウシューズで踊ることが痛すぎて、受験を機にレッスンは辞めてしまった。
美しいクラシック音楽にのるのは楽しかったが
自分が身体を動かして、何か感動的な何かをつくりだすことが分からずに苦しかった思い出がある。
バレエの舞台を見ても、良さがよくわからず、寝ていることもあった。
そんな、芸術のわからない自分に劣等感があり、舞台を観ることも遠ざかっていたのだ。
そんな自分を少しずつ変えてくれたのが、新国立劇場のネット公演巣ごもりシアター『マノン』だ。
新国立劇場の舞台そのものも初めて鑑賞だった。
最初に鑑賞させていただいて、まず驚いたのが「バレエはこんなに表情豊かなものだったのか」ということだった。
そして主演、米沢唯さんの身体の美しさ(細やかに筋肉も骨も見えるような、細部まで神経が通っていくような姿)だった。
パドドゥで男性に身を預けながら、マノンが砂糖菓子のようにふわふわと踊る。踊りに重力を感じないのに、マノンの白いドレスのフリルは風と重力によってたゆんと揺れ続けている。
「表情」について
バレエは全くセリフがないから、身体で観客に語りかけて物語が進んでいく。
マノンは最初は白いドレスを着てヒーロー役の神学生デグリューの恋人となるが
老富豪ムッシューG.Mを魅惑し、愛人となっていく。
その純真無垢な恋心と、女性特有の、男性を性的に魅了しようとする所作が全く異なるのだ。
本気でキスし、胸ときめかせ無邪気に恋人に抱きつく女と
愛人の肩に脚をかけ太ももを一瞬ちらっと触り、ドレスのすそをまくり魅惑する女が
一つの身体に同居している。
振付がこんなに意味のあるものだったのかと驚いた。
時々「え!?」と驚くぐらい、性を存分に出した振りもある。
「もしかしたら今のは一瞬だったけれども、この振りは寝たという意味付けをしているのかも」と感じさせる。色々な男にどんどん持ち上げられるマノンは、いつも軽やかだ。
そんなマノンは純愛と性愛のはざまで揺れて最後に死に至る。
他の登場人物も、本当に人間臭くて群像劇としても面白い。
パドドゥとして二人が舞台に上がって表現するシーンも、心情がとても静かになって良いのだが
大勢のダンサーが一度にステージに上がり、めいめいの登場人物の生活を表現する瞬間はエネルギーが上がって元気になる。
関わってくださった方々に、本当に良い時間をありがとうございます、と頭が下がるばかりだった。
落ち着かないこの時世
本当に美しいものに触れることがとても大切だと思う。
現在は『ドンキホーテ』を公開中だ。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/sugomori-donq/